No.288 ナースに保険は必要か?
ヒヤリ・ハット事例は、医師より看護師の報告が圧倒的に多い事をご存知でしょうか。医療の世界は、常に危険と隣り合わせです。自分の身を守るためにナースにも保険が必要です。今回は医療の現場で活用するナースの保険について見ていきましょう。
看護職損害賠償責任保険
看護師は命を預かる職業ですので、ミスをしてはいけないという緊張感の中で働いていると思います。しかし、絶対にミスをしないという事は人間である以上ありえません。
そこでナースには、看護師個人のミスやトラブルにより訴訟を起こされ、法的責任を追求された場合に使える保険が必要です。看護業務中の人の身体や財産への損害、人格権の侵害による法律上の責任をカバーする保険というわけです。この保険の名前を「看護職損害賠償責任保険」と言います。
この保険は誰でも入れるというわけではありません。条件としては、看護師、准看護師、保健師、助産師のみです。看護助手の方は加入できません。また個人事業主で事業者責任を負わされた際には、補償の対象外となります。
保険が使えるのは、日本の国内で行われた保健師助産師看護師法に定められた看護の業務内容が対象です。法律上の損害賠償金を補償する以外に、争訟についてかかった訴訟費用や弁護士報酬も補償します。
命に関わる事ですので、自分の身を守るため保険の加入を是非検討しましょう。では、実際保険は、どういったケースで支払われているのでしょうか。
対人事故
対人事故への補償は、仕事中に患者さんや第三者に怪我をさせてしまった際の損害賠償金を補償します。例えば、誤った薬剤を投与してしまい、患者様に障害を負わせてしまった場合などです。損害賠償金等は争訟費用と休業補償を賄います。
またある事例として訪問看護中に患者様を転倒させてしまった場合の補償などです。お詫び品購入費用や治療費等を補償します。
物損事故
仕事中の物損事故を補償します。患者様の私物だけでなく、病院の機材などを破損させてしまった際にも賄います。さらに損壊だけでなく、誤廃棄してしまった物も補償できます。
例えば、口腔ケアをする前に、患者様の義歯をティッシュに包んで、サイドテーブルに置いたが、その後の片付けで誤って他のゴミと一緒に廃棄してしまった。この場合は、再作製費用が賄われます。
例えば、採血の準備でベッドのサイドテーブルに置いてあった患者様のメガネに腕があたってしまい、落としてしまって破損させた。この場合は、修理費用が補償されます。
ただし、注意点として修理費は、購入時の金額ではなく、使用経過年数に応じた時価額が限度になります。
預かり物の紛失、詐取、盗取への補償
日本国内において仕事中に患者様や病院から預かった物を紛失したり、盗まれたりした際に損害賠償金を補償します。また院内だけでなく、訪問看護中の預かり物も補償します。
例えば、病院から貸与されている携帯を紛失してしまった際には、再購入費用が補償されます。
例えば訪問看護で使用していた施設の、車の鍵を無くしてしまった場合は、スペアキー購入費用が補償されます。
人格権侵害への補償
仕事中の会話で、患者様や他のスタッフの自由、プライバシーや名誉を侵害し、法律上の損害賠償責任を負った際に、保険金をお支払いします。
例えば患者様と対話中に、勘違いで暴言を言ったように捉えられてしまい、名誉棄損で訴えられた際には、争訟費用が補償されます。
錠交換費用補償
鍵の紛失や、詐取、盗取などの被害にあい、錠自体の交換が必要となった際に、錠交換費用を補償します。
例えば、勤務先病院の看護師寮の鍵を紛失してしまった。錠交換費用のため損害賠償金が賄われます。
- ■まとめ
- 看護職員の労働実態調査では、およそ8割を超えるナースがヒヤリ・ハットを経験しています。そんな時に頼りになるのが、この「看護職損害賠償責任保険」なのです。今回お伝えした内容を参考に自身の身を守るためにも今一度、保険の検討をしていきましょう。